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 Essay 9・・・・・・「幻獣ムベンベを追え」を読んで


予想どおりにいかないからこそ発見がある

 探検とデザインは似ている。事前調査をし、計画を立て、検討し、実行し、評価する、と言う行程をたどるはずだと思われている(たぶんお役所的には)。しかし、当然机上で建てた予測どおりに事は運ばない。予測どおりに行くのであれば、それは最早実行する価値のない探検であり、現実化する価値のない分かり切ったデザインである。そこには現場で出会う驚きと喜びがない。現地、現場でのトラブルを乗り越え、より良き結果を求めるのは行為者の性である。しかし机上の人はそれを理解しようとしない。本書は、コンゴの奥地テレ湖に棲むという幻の獣「ムベンベ」を追って、過酷で退屈な調査の日々をアフリカの奥地の湖畔で大いに楽しむと言う、ちょっと荒唐無稽な探検話である。先が明確に見えず、手探りで答えを掴みだそうと前進するから価値がある。探検もデザインも。


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