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 Essay 5・・・・・・「カサブランカ」を観て


建築と街の幸福

 「カサブランカ」都市の名前そのものだけをタイトルにした映画はめずらしい。しかし、この映画にカサブランカの街並みは、ほとんど写されていない。ほとんどの場面は、酒場の中のみで展開する。それでも、この映画を見終わった後に、この街を体験したような気になることに、何の違和感もない。平面図の描きづらそうな酒場の構成と、迷路的で有名なカサブランカの街の構成を重ね合わせて、観ているからだ。一つの建物の作られ方が、街の作られ方にフラクラル図形のように連続して行く、前近代的な幸福な前提がそこには存在する。女が古いカサブランカの街から去るように、時代は、建物と街の幸福な連続的な関係から去って行った。

 カサブランカ(=白い家)は、建物名が都市名になっためずらしい街である。建物名が直接的に都市名になっていることが、はからずも建物と街の幸福な連続性を傍証しているようだ。


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