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 Essay 3・・・・・・「新宿熱風どかどか団」を読んで


シンプルなドカドカ人生

椎名誠35歳、脱サラして独立した頃の話である。僕も37歳で設計事務所を始めたので、独立したての頃の組織に属していないあてど無い不安感と自由な開放感に共感を覚え懐かしく思い出す。そして不安感に背中を押されるように、頼まれる仕事を受けている内に、自由と開放感は日常に飲み込まれる。慌ただしい締切に追われるように、テントを担いで海や山に出かけて行く椎名氏。開放感に満ちた椎名氏のテント生活を読んでいると、日常の中で汲々としている建築の設計とは何なのかと思えて来る。コジャレたデザインだの差別化だの付加価値だのと、所詮他人の頭で考えたような余計なことを考えているより、建築なんてシンプルに丈夫で雨風が凌げて、暑い寒いが快適ならばそれだけで十分いいじゃないかと思えてくる。そんな一冊である。


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