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 Essay 22・・・・・・「おいしい空間・その8/井戸水の熱環境利用」

(共同執筆:TAICS/長谷川えいこ)


前回のコラムでは、冬は温かく、夏は冷たく感じる床下の熱環境を利用するための工夫を続けてご紹介しました

が、15度程度の一定の温度を保つ井戸水も、同様にその温度利用が可能です。井戸水が出るお宅の建て替えに当

たって、夏の冷房にその井戸水を利用できないかとの建て主のご要望をきっかけに試みた事例をご紹介したいと思

います。

リビング上部の吹抜けに面した2階の廊下手摺にラジエーターのような壁を天井までつくり、そのパイプに井戸水

を循環させることで、輻射冷房の面をつくりました。

当初は、井戸水を利用する水冷式のヒートポンプ方式なども考えましたが、システムが複雑になる点や、冷房を

空調機(クーラーの風が苦手なご家族だったので)を使わずに輻射冷房にした場合の制御機器の開発の難しさや、

井戸水の冷水の量によっては他の設備機器との二重設置が必要になってしまう部分が出るなどのコスト的な問題な

どがあり、井戸水利用の本格的な水冷ヒートポンプ方式は断念しました。次ぎに考えたのが、制御するセンサーは

住む人の皮膚感覚にお任せして、手近に出来る範囲で井戸水を輻射冷房に利用する方法でした。暑ければ循環する

井戸水の量を少し増やし、涼しければ少し絞っていただく。最もシンプルな方式です。輻射冷房なので夏でも窓を

閉め切る必要はありません。窓から入る風とともに、やさしい涼しさのおいしい空間を楽しめます。


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