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■ Essay 22・・・・・・「おいしい空間・その7/熱環境の循環」 (共同執筆:TAICS/長谷川えいこ) 床下の熱環境の利用について続けて紹介してきましたが、次は、部屋全体の熱環境の循環を試みた事例を紹介した いと思います。平面が9坪弱の都心の小さな住宅は、縦に伸びることで豊かな環境を享受すべく、半地下から、 屋上につながるペントハウスを結ぶ螺旋階段の空間が、上下の熱環境を循環させる役割を担う設計としました。 半地下は床下と同様に土と接しているために夏は涼しく、冬は暖かい空間です。一方、ペントハウスは風通しは 申し分ないものの、夏の暑さと冬の寒さの影響はダイレクトです。同じ家でもこれだけ極端に異なる熱環境を うまく循環させてやれば、自然の温度差さだけで部屋の温度を中和させることができるのではないかという 考え方です。特に冷暖房をしなければ、夏の昼間は半地下室が、ペントハウスより3度ぐらい気温が低く、逆に 冬の夜は半地下室が、ペントハウスより3度ぐらい気温が温かくなります。確かに東京の都心部では、夏や冬の ピーク時は、機械設備による冷暖房を全く利用せずに過ごすのは難しいかもしれません。それでもこの地下室と ペントハウスの温度差を利用して少しでも環境に負荷を掛けずに過ごせたらと考えました。 この住宅では、地下室とペントハウスを二つのダクトで結び、一つのダクトには上向きのファンを、もうひとつの ダクトには下向きのファンを設置して、季節と時間帯によって縦方向に空気を循環させています。 気温差を上手く循環させることにより、快適に過ごせるおいしい空間が広がります。 |
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