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 Essay 15・・・・・・「おいしい空間・その2/変幻自在」

(共同執筆:TAICS/長谷川えいこ)


 「おいしい空間」シリーズの第2段は、空間を変幻自在に応用する術の話しです。とはいっても、これは我々の先人が当たり前のように暮らしの中で行っていたこと。ちゃぶ台を囲んだ一家の食事も、布団を並べた畳の上の就寝も、同じ空間で行うことができました。また襖の開閉によって、空間は大きくも小さくもなったのです。このように部屋の用途も形も変幻自在に変化する様は、硬い壁に囲まれた個室の概念しかなかった西洋人の目からは、新しい画期的な建築の姿として写っていました。かつて西洋から羨望の眼差しを受けていたこのすぐれた知恵を、我々日本人が積極的に活用しない手はないと思うのです。

 私たちの設計では、床がフローリングでも、引き戸や襖をよく使います。壁に重なるように引き込めば、邪魔にもならず、風通しもバッチリ。部屋も広く感じます。子供の成長に合わせて、共同部屋も、個室化するのも簡単。寝室の隣に子供室があれば、成長して家を出た後は、引き戸を取り外して広々とした寝室にすることも可能。トイレも、引き違い戸(日頃は片側を固定して利用)にしておけば、取り外すだけで介護のスペースが生まれます。車椅子で利用するときも、ドアよりずっと開け閉めが楽なのです。引き戸で間仕切る事により、一つのスペースが、子供部屋になったり、寝室の一部になったり、廊下の一部が介護のスペースになったりと、なんどもいろいろに味わえる、おいしい空間に成ります。


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